漢字のお話、たびたび。
今回この漢字を選んだのは、特に深い意味があるわけではなく、そういえばさかずきって杯と盃があるなー。そんな感じ。
そんな軽い気持ちで『字統』を引いてみたら、うわー!異体字も含めると、「さかずき」って字が16もあるー。
そして、「盃」って「杯」の異体字なの?見た感じ、「杯」はワイングラスみたいな脚付きな感じで、「盃」はお皿みたいな平べったい感じなのですが。
気を取り直して、
「杯」。声符は不。字はまた桮に作り、否声。〔説文〕六上に「桮ははこ(字が出てこない)」とあり、こう(字が出てこない)字条十二下に「小桮なり」とあり、杯が大杯、はこ、こう(字が出てこない)は小杯である。杯酒を交えて仲直りする杯酒解怨のことは、中国でよく行われたが、酒席で大騒ぎする杯盤狼藉のことは、中国ではあまり聞かぬようである。杯は飲器であるから、のち盃に作る。
ちなみに「杯」の読みは、ハイ、さかずき、まげもの。(まげものって何?)あと、「桮」も「杯」の異体字です。
いまいちピンとこないので、他の「さかずき」も載せてみます。
「卮」。(「巵」)。大きな把手のある酒器の形。読みはシ、さかずき。
「斝」。斝の形に斗勺を加えた形。読みはカ、さかずき。
「筒」。筒形の器。同は酒杯の名。読みはトウ、つつ、さかずき。
「觚」。細長く、上の開いた形の酒器。読みはコ、さかずき。
「盞」。重ねあうものの意。盞は最も浅く小さい杯をいう。読みはサン、さかずき、あぶらざら。
「觥」。「(字が出てこない)」。兕牛の角、以て飲むべき者なり。読みはコウ、さかずき。
「爵」。「(字が出てこない)」。酒器の爵の形。読みはシャク、さかずき。
「觳」。酒器の爵の形。読みはシャク、さかずき。獣角をもって作った酒杯。読みはカク、コク、あらそう、さかずき。
「觴」。實てるを觴と曰ひ、虚なるを觶と曰ふ。読みはショウ、さかずき。
「觶」。郷飲酒礼で用いる角の酒器とする。読みはシ、さかずき、さかつぼ。
あと、『中国の酒書』という本に、
「周代の制度では、一升〔を受けるもの〕を「爵」といい、二升を「觚」といい、三升を「觶」といい、四升を「角(かく)」といい、五升を「散」といい、一石を「壺(こ)」といった。これらの別名には、「盞」、「斝」、「尊」、「杯」などがあって、その呼び方は一様ではない。〔盞はさん、醆に同じであるが〕、あるいは、小玉杯を「さん」というとも、また、酒のかすかに濁ったのを「醆」というともいう。ただ、〔さん・醆を〕俗に盞と書くのである。六国(戦国)以後、卮を製(つく)る、というものも多いが、その形や製(つくり)はつまびらかでない。」
とありましたよ。
それにつけてもおやつはカール、ではなくて、「さかずき」ということばにこれだけの漢字があるということは、お酒を飲む意味がそれぞれ違っていたということなのでしょうか。
あと蛇足ではあるのですが、たとえば「障がい者」とか、漢字があるものをわざわざひらがなで書くのは、ことばの本質から目をそらしているみたいで、好きではないのですよ。
参考にした本:『字統』(平凡社)
『中国の酒書』(平凡社)