漢字のお話、みたび。
今回なぜ「わらう」の漢字を取り上げようと思ったかといいますと、みんなご存じ志村けんさんが亡くなって、正直まだ半ば信じられなくって、それにつけても思うのは志村けんさんの「わらい」は他人を下げてわらいを取るのではなく、自分を下げて他人を笑わせてくれる、優しいわらいだったなあ、と。そういえば「わらう」という漢字も「笑う」と「嗤う」があったよなあ、と。まあそんな理由。
さっそく、白川静さんの字書三部作(『字統』、『字訓』、『字通』)のうちの『字統』を引いてみます。白川静さんの講義を受けているみたいで、なんか楽しい。
字訓索引で「わらう」を引くと、「笑」と同じところに「咲」があってびっくりだ。
「笑」。声符はしょう。(字が出てこない。)笑は巫女が両手をあげて身をくねらせて舞い、笑いえらぐ形の字である。(中略)咲は笑の俗字とみてよい。自作を人にみせるとき「御一咲を乞う」のようにいう。まだわが国では、花が開くことを咲くという。口もとのほころびるさまを花の開くさまにたとえたのである。
ちなみに「笑」の読みは、ショウ(セウ)、わらう、さく。
「嗤」。声符は蚩。蚩に愚かの意がある。(中略)嗤笑、嗤詆、嗤誚など、嘲笑し、冷罵することをいう。鼻で笑うことを嗤鼻という。
ちなみに「嗤」の読みは、シ、わらう。
批判だらけのこんなご時世だからこそ、人の愚かさを嗤うのではなく、花が咲くのを見て笑いたい。
参考にした本:『字統』、『字訓』、『字通』(平凡社)