『カクテルブルース in N.Y.』は、私が初めて買ったお酒関連の本です。(たぶん。なにせ〇十年以上前のことなので、記憶が定かではないですが。)
本の舞台はニューヨークですが、作者はフランス人。ジェイズ・バーのオーナー兼バーテンダーのジェイ、ピアノマンのアルシー、ウェイトレスのローズと、バーを訪れる人々が織りなす、カクテルストーリー。フランスの週刊誌の趣味のコーナー的ページで好評連載されていましたが、最後は主人公のジェイが客に刺殺されるという、大胆な終わり方。
久しぶりに本を開くと、中の紙はすっかり変色してしまっていますが、中身はちっとも色あせていない。
カクテルは人を詩人にするのでしょうか。文中には気の利いた台詞がたくさんあります。例えば、「束の間の味」の中でケートがアイリッシュ・コーヒーを目の前にしてジェイに投げかけた一言。
「あのね、アイリッシュ・コーヒーって、人生みたいなカクテルなのよね。
最初の一口は強烈、そして甘く優しい。ある時は熱く、そして時々冷たいわ。
ところが時が経つと生ぬる気抜け、すっかり灰色のうすらぼんやりよ。
どう?人生の味は・・・・・・」
この本に載っているアイリッシュ・コーヒーのレシピは、ウイスキー40ml、砂糖1tsp、濃いめのホット・コーヒー適量。ウイスキーに熱いコーヒーを入れ、ホイップ下生クリームを上にフロート。カクテル作りの描写が、すっごくおいしそうなんだなあ。
この本や続編の『カクテルアンコール in N.Y.』を手にバーに行って、「この本に載っているこのカクテル作ってください!」って、よくやりました。
(超余談ですが、『カクテルアンコール in N.Y.』の方に「ナイト・メアー」というカクテルがありまして、ラム、レッド・ヴェルモット、ホワイト・ヴェルモット、ペパーミントリキュール、ウースターソース、トマト、アーティショークの芯、干しブドウ(文中ではジンも入れてました。)からなるという、すさまじいカクテル。一度飲んでみたいのだけれど、バーで頼む勇気がありません。)
たまにはバーで人生の味、どうですか?
参考にした本:『カクテルブルース in N.Y.』(求龍堂)