今回紹介する詩は、唐が折り返し地点を迎えた頃の詩人、孟郊さんのものです。なんか一生不遇だったらしいですけれど、お酒が慰めてくれたのかな。
酒是古明鏡 酒は是古明鏡
輾開小人心 小人の心を輾開す。
酔見異擧止 酔へば擧止を異にするを見
酔聞異擧音 酔へば擧音を異にするを聞く。
酒功如此多 酒功は此の如く多く
酒屈亦以深 酒屈も亦た以て深し。
罪人免罪酒 人を罪して酒を罪する免れ
如此可爲箴 此の如く箴と爲す可し。
お酒は不思議な鏡だね。
ちっぽけな僕の心を開く。
酔えば動きが違ってくる。
酔えば声が違ってくる。
お酒の徳は大きいけれど、
お酒の罪も同じだけ。
お酒を責めないで、罪は僕にある。
僕がもっと、気を付けるからさ。
お酒は私たちを喜ばせようと頑張っているのだから、責めてはかわいそうですよ。
超余談ですが、またまた『十八史略詳解』から。宋の時代は、一見地味ですがいぶし銀のような名言がそろってます。
宋の宰相となった司馬光さんという人が、ただ一言で一生行っていいものは何かと聞かれて、「それ誠か」と答えました。誠の道に入るには何から始めたらいいかと聞かれて、「妄語せざるより入る」と答えました。
ちなみに、誠を『字統』で引くと、誓約を成就する意味。
誰が我が国の君主になっても構わないけど、うそは言わないで。
参考にした本:『中華飲酒詩選』(筑摩書房)
『字統』(平凡社)