秀丸の酒とゲームとロボットの日々

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酒の日々・読むお酒 李白『月下独酌』其二

 お酒は、飲むだけが楽しみではありません。古今東西世界には、読むことで私たちを桃源郷へ誘ってくれる飲酒詩などの「読むお酒」が、たーくさんあるのです。

 まずは、私がいっちばん大好きな飲酒詩を、ご紹介。

 

 李白『月下独酌』其二

天若不愛酒  天若し酒を愛せずんば

酒星不在天  酒星天に在らず。

地若不愛酒  地若し酒を愛せずんば

地應無酒泉  地に應に酒泉無かるべし。

天地既愛酒  天地既に酒を愛す

愛酒不愧天  酒を愛するは天に愧ぢず。

已聞清比聖  已に聞く清を聖に比し

復道濁如賢  復た道ふ濁は賢の如しと。

賢聖既已飲  賢聖既に已に飲む

何必求神仙  何ぞ必ずしも神仙を求めん。

三盃通大道  三盃 大道に通じ

一斗合自然  一斗 自然に合す。

但得酒中趣  但だ酒中の趣を得んのみ

勿為醒者伝  醒者の為に伝ふる勿れ。

 

 訳は、中国文学者・靑木正兒大先生(1887-1964)。

 李白さんは、中国の唐の時代の大詩人。字は大白。

 

 この詩ほど、お酒の素晴らしさを高らかにうたいあげた詩があったでしょうか?いやない!

 漢文の知識がそんなになくても、月と李白さんがお酒をかわしつつ会話している風景が心に浮かんできます。きっと、李白さんには天に酒星が、地に酒泉が見えていたのだなあ。

 曹操さんが禁酒令を出した時、人々は濁酒を賢人、清酒を聖人と呼んで飲んでいたんだそうな。賢も清も、全ては私の中にある!

 お酒を飲みすぎると記憶はどこかに行ってしまいますけれど、きっと「自然」、すなわち無為の境地に至っているのですよ。

 晋の孟嘉という人が、「お酒の何が好きなのよ?」と聞かれて、「貴方はまだ酒中の趣を知らんのよ」と答えたのだそうな。酒中の趣、それはお酒の浪漫。過去へ未来へ、まだ見ぬ異国へ、私を誘ってくれる。

 

 最近は、飲酒運転問題などでお酒の肩身が狭いので、

 「酒を愛するは天に愧ぢず。

 この言葉が、私の心の支えなのですよ。

 

参考にした本:『中華飲酒詩選』(筑摩書房